先日、交通事故に遭ったネコちゃんが運び込まれた時のはなしです。
来院時、目立った外傷はありませんでしたが、既に相当なショック状態にあり、
検査を進めると、腸骨骨折、仙腸関節の脱臼、恥骨骨折など
主に、骨盤に重度のダメージがあることが判明。
レントゲン画像の一部。
骨盤骨折のため身体がややローリングしている。
同時に、排尿障害等も認められたので、
骨盤腔内の臓器自体にも相当なダメージがあるようでした。
すぐに治療を開始し、
その間、ご家族はネコちゃんの名前を呼び続けていらっしゃいました。
すると、ネコちゃんもその呼びかけに全力で応えるように、
か細い声でしたが鳴いたり、首を動かしていました。
しかし、治療の甲斐なく、ご家族全員に見守られる中、
安心した表情でこのネコちゃんは17年の生涯に幕を閉じました。
すると、ネコちゃんに寄り添っていた小さなお子さん2人は、
愛猫との突然の別れに声を上げて泣き出してしまいました。
交通事故というショッキングな原因だったので、
そのお子さん達に残った心の傷は
深いものになってしまったかもしれません。
小動物の臨床獣医師は、こういった別れに直面する機会が多い仕事です。
でも、それをただの仕事と思うことは決してありません。
「ペット」がいて、「ご家族」がいて、「獣医師」がいる。
必ずあいだには「ご家族」がいるのです。
だからこそ、最愛のペットを失ったご家族の
心のケアが大切になるのだと思います。
そのペットとの思い出が、楽しいものになるか、悲しいものになるかは、
獣医師のかける言葉ひとつで変わってしまうかしれないのです。
今回の出来事は、私にとって、
大切なことを再認識させてくださる出来事でした。